結婚について

川瀬 貴也


　みなさんは結婚についてどういう考えを持っていますか。まだまだ先のことだ、という考えが一番多いでしょう。勿論私も、みなさんと同じくらいの年齢の時には、そう思っていましたが、結婚という事態は、いきなりやってくるから油断なりません。ぼやぼやしていると、私のように周りの人から惜しまれつつ、あっと言う間に結婚して、学校の先生になってから女生徒たちにもてても無駄になることもあります。
　私は授業中「急いで結婚、ゆっくり後悔」という昔の格言を教えましたね。覚えていますか。さすが、昔の人はいいことを言いますが、昔の人は「地球は平らだ」というようなことも言っていたので、全てをそのまま信じることは危険です。でも、この言葉は哀しいですが、真実を語っていると言えるでしょう。
　そこで、私はみなさんに「結婚」に必要なことをお教えしたいと思います。こういうことは、早く知っておいても損ではありません。

　さて、結婚という恐ろしいことをするためには、色々考えてはいけません。思いきった決断と、時には無謀とも思えるような行動をとる必要があります。将来のことをあれこれよく考えたら、結婚という「賭博」はできません。とりあえず、相手をだまして、それから自分もだます必要があります。ですから、芸能人に多い「電撃結婚」という結婚は、実は一番理想的な結婚の一つだと言えます。まだ相手に対する「魔法」が解けていない結婚ですから。
　みなさんはよく考えずに授業を欠席して「どうにかなるだろう」と思って、結局はFをもらってしまうというように、考えずに行動することが得意のはずですから、結婚する「資質」があるのは確かです。その点は自信をもってもいいでしょう。私も保証します。私も、結婚するまでは「どうにかなるだろう」と楽観的だったのですが、結婚生活は日増しに厳しくなり、みなさんの日本語の勉強と同じく、だんだん難しくなってきました。結婚生活もみなさんの日本語の勉強と同じく、途中で「辞めます」となかなか言えないところがつらいところです。

　さて、ここからは男女別にアドバイスしたいと思います。
　まず、男から。平和な結婚生活の第一歩は、「妻にどれだけ従うか」ということです。この「生活習慣」は、結婚式の準備から始めなければなりません。結婚式のやり方・ドレス・新居の家具・食器などは、将来の妻に相談し、必ず許可をとってから準備しましょう。そうでなければ、結婚生活は最初から挫折することが確実です。我々教師がみなさんの成績を何とかごまかしてつけるように、何よりも妥協の精神がなければなりません。
　次は女性に。楽しい結婚生活は、「最初の段階で、夫をどれだけ調教するか」ということにかかっています。皿洗い、洗濯、掃除などを「男がするべきもの」と明確に決めて、実行させなければなりません。「私は女だから、何も決められない」などと言ってはいけません。そんなこと、授業中もなかったはずです。私も授業中、女生徒の「静かにしなさい！」というのは聞いたことがありますが、男子生徒の「静かにしろ！」で教室が静かになったのは見たことがありません。
　つまり、平和で楽しい結婚生活は、みなさんが授業中やっている男女の「役割分担」をそのまま家庭に持ち込めばいいのです。簡単なことですね。

　みなさんと、それ以上にみなさんの相手のご健闘をお祈りいたします。


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