この人はなんと言っても、絵のうまさで定評があります。もともと日本サンライズ社に勤めるアニメーターで、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインで僕はこの人の存在を知りました。

その後『アリオン』というギリシア神話に題材を取った長編で本格的にマンガ家となり（このマンガは後に彼自身によってアニメ化。山岸凉子もこのアニメにコスチュームデザインなどで関わった）、その後も力作、長編を連発しています（記紀神話などを題材にした作品も多く、また近現代視を舞台にした作品も最近書きました）。

この人の作品の魅力は、先ほども言ったように、「絵の巧さ」にあると思います。とにかく溜息が出るほどの巧さです。

彼はあらゆるジャンルに手を出して書いていますが（テニスマンガまであります。安彦さんとしては触れられたくない過去かも知れませんが・・・）ストーリーは、ほぼ一貫して「少年の成長物語」と言うことができると思います（このあたりの見解については、宗教学科の同級生のＴさんに色々教わりました）。それにしても、題材の咀嚼力がすごい！

　

　

＜お薦め作品＞

・『アリオン』中公文庫全４巻。

彼のデビュー作。ギリシャ神話を題材にしたもの。

　

言うまでもなくナザレのイエスが主人公。オールカラーの本で、少し値段は高いですが、内容も素晴らしい。安彦さんは聖書に造詣が深く、田川建三氏（聖書学者、『書物としての新約聖書』勁草書房、１９９７年の作者）の解釈についても、あとがきで一言述べています。

　

「満州国」を舞台にした近現代もの。実在の人物（石原莞爾など）が出て虚々実々の駆け引き。

・『王道の狗』講談社（白泉社から文庫化）。
近代日本とアジア、アイヌをめぐる物語。「アジア主義」を考えたい人は必読。

・『機動戦士ガンダム　The Origin』角川書店、連載中。
キャラクターデザインをした安彦先生自らか描くガンダム。ガンダム信者はこれを読まなきゃ。